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過去の日記



[行間を読め!]

Oct.2,2002 (Wed)

誰の足?

 「この台風による交通機関の混乱は、およそ**万人の足に影響を与えました・・・」
 よくあるニュースの一文であるが、今の所そういう状況には遭った事は無く、
画面を見てせせら笑って居られたのだが・・・このたびその「〜の足」の一対を担う事になろうとは。
 いや、台風が来ている事は知っていた。
でも、自分に影響が出る時間では無いと考えていた為に、それほど深刻には考えていなかったのだ。
いやぁまいったね。
新幹線が止まった際に、ビジネスマン達がワラワラとデッキへ電話をかけに出てゆくのは、
壮観と言えば壮観だが、自分がその一人であるのがちょっとイヤだ。
まぁ、会社に連絡を入れるのは、業務時間内であれば当然なのだが・・・
ニュースで伝えられる人間達の一人になった実感があるからなんかイヤだった。

 単なるワガママである

 いくら個人的に拒否しようが、紛れも無く俺は世間一般から見えるところのサラリーマンなのだ。
どんな趣味をしていようが、どんな思想を持っていようが、勤め人には変わり無い。
しかも「出張」で、「新幹線」が止まって、「会社に連絡」を入れないといけない、サラリーマンである。
おお、嫌だ。

雷鳥と白鷺

 米原についてちょっと驚いた事がひとつ。
なんとサンダーバードが米原に乗り入れているのを見た。
そして乗った。

 北陸線と米原の東海道線の連絡は、特急の「しらさぎ」と「加越」が一般的だ。
いわゆる国鉄カラーというか、ヤクルトというか、例のクリーム色の車両をまず思い浮かべる。
が、入線してきた車両のシルエットは、まごうことなき683系のスマートなもの。
 いや、正直あのシルエットを見た時には、
「しらさぎの車両転換てまだだったんじゃ無い?」
 と思い、列車のプレートを見て「何でサンダーバードが米原に乗り入れてるんだ?」と混乱してしまった。
(「しらさぎ」「加越」の車両転換は2003年春から行われる)

 という訳で、学生時代にはさんざんぱら乗ったサンダーバードに非常に久しぶりに乗ったのだった。
でもさ、湖西線をかっ飛ばすサンダーバードに比べると、なんとものろく良く揺れるもんだ。
サンダーバード自体、その軽量な車体のおかげでよく揺れるのだが、湖東を走っていると更に揺れてる気がする。
運転手も楽じゃ無いと思うよ。
というか、西日本の運転手が運転してんの?こういう臨時的運行だと、どっちが担当するの?誰かこの疑問に答えてくれ。

 敦賀に着いた際の車掌のアナウンスが笑えた。
その壱:「敦賀、お出口は右側となります」
その弐:「失礼いたしました、敦賀、お出口は左側となります」
その参:「度々失礼いたします、敦賀、お出口は右側です、右側となります」
 慣れない路線で大変だね全く。同情するよ。

でも、この過密な日本の鉄道システムを運行するJR。
どっかのローカル私鉄路線(現在運休中で廃線を検討中)等の様な危機管理では困るんだから当然か。

 敦賀を前にした車掌の言葉、
「湖西線の雨と風が酷いので、湖東を廻っている」
「昔の事故の事もあり、湖東を廻っている」
 という事は何か?サンダーバード自体も緊急避難的に湖東廻ってるのか?
それと昔の事故というのが気になるな。

 う〜む、状況と少ない証言から想像できる範囲を越えたかなぁ。
ここはひとつ鉄道に詳しい人間に聞くとするか。
 と、考えて思い浮かぶのは、HALと枯れ木なのだが、こういう細かい事は枯れ木の方が詳しいかな?
HALは、というかあいつと話をすると、全てハードウエアな話になってしまうからなぁ。


Oct.4,2002 (Fri)

大石まさる

『りんりんD.I.Y』:大石まさる
 え〜前作の「りんちゃんクッキーの秘密」の続編。
買うのも恥ずかしければ、内容もそれなり恥ずかしい作品である。
まぁ、なんというか作品自体はともかく、「みずいろ」で好きになった作者である。
なんてぇか、「みずいろ」を読んで面白かったというか、共感できたというか。
作者自身にも源体験があろうかと思うが、それを作品に昇華できていると思う。
 あと、短編集の「空からこぼれた物語」もいい。
作者が持っている雰囲気に関しては、こちらの方が良いとも言える。

 絵柄的には丁寧な書き方をする人です。
しかし、作者本人としては頭身は少なめな方が書きやすいとか。
ま、たがみよしひさ程のギャップは無いし、変な使い分けもしていないから問題ない。
 以下、書店リンク。

りんりんD.I.Y

『りんりんD.I.Y』
著者:大石まさる
 
 え〜前作の「りんちゃんクッキーの秘密」の続編です。
コレ、買うのも読むのもちょっと恥ずかしい・・とか言うヤツは買わないだろうな。
設定は中学に進学し、元気系キャラ=従姉妹を追加。
続くのか?

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りんちゃんクッキーのひみつ

『りんちゃんクッキーのひみつ』
著者:大石まさる
 
 恥ずかしい・・

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泥棒猫1・2

『泥棒猫』
著者:大石まさる
 
 アワーズ連載なので、一番メジャーなのかも知れない。
続いている様で続いて無いようで・・・作者か編集者の気分かしりませんが、主人公がスイッチ中だったりします。
 
 そういえば最近こういうテイストの漫画って減ったよな。
そういう意味では貴重だよこの作家ってさ。

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みずいろ1・2

『みずいろ』
著者:大石まさる
 
 ドロドロな作者の趣味が出ている漫画。
でもこの趣味が非常に俺の感覚とマッチしているので、俺的傑作。
多分この連載には編集者との打算に「お色気」というカードを切った気がする。
いや、むしろ作者の趣味かも知れないが、作品を壊すレベルでは絶対に無い。
微妙かも知れないけど、バランスは良いと思う。

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空からこぼれた物語

『空からこぼれた物語』
著者:大石まさる
 
 短編という事で作者の趣味や思想が反映しまくり。
嫌いじゃないというか、むしろ大好きです。

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流れ星はるか+

『流れ星はるか+』
著者:夢ノ二
 
P.Nは夢ノ二となっているが、大石まさる。
よくある糊口凌的なエロ漫画、悪くない(笑)

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Oct.6,2002 (Sun)

指輪物語

『指輪物語』
 
 え〜何故か青森のシネコンで見た映画ですが、この度DVDになったそうです。
つうか、早くないか?最近の映画がセルDVDになるのってあっというまじゃない?
まぁ、それはそれでよいとして、なんとなく買ってしまいました。
最新技術でファンタジーってのもなんだが、役者が頑張っているからよしとするか。
 
 本作の監督はピーター・ジャクソンなのだが、これを聞いてあなたは何を思い出す?
・ハリウッド作品の「さまよう魂たち」か?
・受賞作の「乙女の祈り」か?
 いやいや、この文書を読んでいるヤツラであれば、間違いない。
そう、「ブレインデッド」の監督だろう。
つうか「指輪物語」と「乙女の祈り」を抜かせば、みんな同じ様なもんだがね。
 
 DVDの欠点というか、家庭用のビデオ媒体ならば全てそうなんだが、映画館の迫力は無い。
単に綺麗な映像ならば解像度さえ高ければ問題無いが、雰囲気までは作れない。
映画の映像とは、映画館で上映される事を前提に作成されている絵である。
家庭でそれほど再現できるハズが無かろう。
この映画で言えば、特に坑道のあたりかな。
映画館では、自分が入り込んだ様な錯覚が得られたが、さすがに家庭じゃ無理。

ちょっと上向き

 全くもって更新していなかったのが、徐々に更新し始めている。
いや、サボった挙句に不精ながらぽつぽつ書き始めた本人が言う事じゃ無いな。
それにはちと理由がある。いや、無くても読者というか巡回者には一向に構わないのだろうけど。
ただ、主張しておかないとね・・・臭いモノには蓋をしろ、欲しいモノは大声で・・・という事だ。

 まずは鬱ノ宮から越前に戻った事。
当然だな、なんせ実家だ。雑多な家事をまとめてやってくれるおかげで、余裕がある。
次に入力環境だ。思いついたらメモを取るなんて事は今更できないこの私。
漢字変換はソフト任せだし、何よりタイピング以外の入力が億劫になっている。
脳内に展開できる情報量もまた然りで、整然と並べて価値が出る情報は全て情報端末に依存している。
おかげで記憶している範囲が更に偏り出す。
いやいや、入力環境の話だったな。
WorkPad+フォールディングキーボードの威力だ。
フッと思い浮かんだら、パカ、カシャン、カシャン、ザクッ、と5アクション程度でタイピング開始だ。
4ツ折だから、多少芝居がかるが、慣れた手つきでサクサクっと準備すると、中々に気持ちいい。
つまり、良い道具なのだ。


Oct.7,2002 (Mon)

クビキリサイクル〜青色サヴァンと戯言遣い〜

『クビキリサイクル』〜青色サヴァンと戯言遣い〜
著者:西尾維新
 
 え〜なんか個性もへったくれも無い書き出しだが、メフィスト賞作家だそうだ。
現在、立命館に在学中だとか・・・。
なんか変な名(西尾維新)だが、アルファベット表記だと「NISIOISIN」となる。
アルファベット表記だと、点対称になるわけだ。
まぁ、ミステリに分類される作家だと、こういう遊びをよくやるのか?
 
 対象年齢はそれなり低く取ってある。
つうか、作者が二十歳そこそこなんだから、あんましオドロオドロしいのも考え物だがね。
表紙のイラストが結構恥ずかしい。
 
 作品としてはサックリ読める内容である。
内容を簡単に書くと、絶海孤島に天才だらけの金持ち主催なサロンで猟奇殺人はお腹いっぱい、である。
そして誰もいなくならなくて、真相はあっても社会的には闇の中で、連載は続く。
あ、終わっちまった。
つうか、ネタが切れるので、作品世界は下を読んでくれ。
 
 ああ、因みにだ。
赤くて、オープンで、アメ車で、蛇の名前、ときたら『バイパー』だろ?
コブラと言うならば、ブルーにホワイトのレーシングラインが2本だと思ったのは私だけか?

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クビシメロマンチスト〜人間失格・零崎人識〜

『クビシメロマンチスト』〜人間失格・零崎人識〜
著者:西尾維新
 
 え〜、標題から判るように、この小説は『戯言使いシリーズ』では無く。
『クビ・首・クビ』なシリーズです。
今度はちゃんと大学が出てくる。某大学なので、舞台は京都。
人間失格と言えば太宰だが、まさか「生まれて、すみません」まで使うかね。
 
 今回はラブってハニる青春モノという色合いが濃いが、相変わらずサックリ読める。
サクサク読めるんだけど、引き込まれる感覚は無かった。
(まぁ、小説で今までで一番引き込まれたのは、京極作品だけどさ)
なんつうかさぁ、やたらとイタイ事書く作者でさぁ。
なんというか、日常的に押さえ込む黒さってのをサックリ書く所がなんかイイ。
どんな人間でも、多少の歪みや抑圧はあるわけで、そういうのを自覚している人間には多少イタイけど、共感を呼ぶ所がある。
だからと言って俺が同種の人間ではありえないが、日常の流され方っていうのかな。
誰しもが持つそういう面に関しては、やっぱり共感するのだよ。
普通の家庭だからって歪みが無い訳じゃない。
むしろ普通だと思い込もうとしているところに歪みが生じる。
言ってみればスプリングの様なものだ。
歪み、そして抑圧されているのだが、傍からはそう見えないくらい小さくコンパクトにそのポテンシャルを溜め込む。
それがある種の開放を迎える。
俺としては、家を出た大学時代だが、抑圧されてたものが伸びきって広がっちまった。
開放されたが最後、もう元の鞘には収まらない。
隠し様が無いから隠さない。
異常という程では無いが、やっぱり歪んでるのだ。
そういう自分を受け入れられなければ、鬱なってグジグジとしてんだろうけど。
参ったね、嬉々として受け入れちまったんだわ。
他人と同じで無いという事ってのは、猛烈に不安感を煽る。
だから、なるべく外れないでおこうと考えるのが人間だ。
そしてその枠の中で、個性とか言う誤差程度の自己主張をする。
そうやってヌルイ世界を生きていくのが楽なのだ。
尊大になれない不遜さってのは、歪みがある人間の必須アイテムだと思うね。
 
 とかなんとか、書評とか感想とは違うえらい方向に曲がったものだ。

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Oct.8,2002 (Tue)

HUMAN_HUB

 広島のタイトロープなオトコが緊急(っぽい)入院とやらをしたらしい。
しかし、とっとと退院して仕事はしているらしい。
とか伝聞調で書いているとアレだな。

 MSNメッセンジャで遣り取りをした範囲で話をすると。
どうも、労りの言葉は望めないものの、
「何だって退院したばっかりなのにああだこうだと集中砲火を受けなければならないのか?」
という理不尽さを感じているらしい。

 ここで勝手に分析を始めるとするとだ。
そもそもヤツは人を集めるタイプの人間だ。
もちろん「その情深く・人望厚く」では無く、吹き溜まらせる方の集めるタイプだ。
一人暮らしをすれば、自宅は溜まり場。
掲示板作れば、不穏当な話題を好む連中が常連。
類友・朱赤・吹溜、表現は色々とあるが、そういう人間を集めてしまう人間だと評価する。

 友人は財産である。
まぁ、友情とかいうものを動産・不動産的価値に置き換えたとしたらの表現だが、そういうモノが自然と集まってくる。
能力として評価すると、凄いものがあるかも知れない。
でもこれは才能か?どっちかってぇと業だな。
問題なのは、市場経済システムでは、借金も財産という点。

誉めてる・・・つうか、高く評価してるつもりなんだけど・・・え、無理がある?

クビツリハイスクール〜戯言遣いの弟子〜

『クビツリハイスクール』〜戯言遣いの弟子〜
著者:西尾維新
 
 という訳でも無いが3つ目、第3作、サードセッション、三冊目だ。
いわゆる講談社の密室本というヤツで、全編袋綴じなのでまずはこれをやぶらないかん。
森博嗣のヤツも以前破ってるが、なんつうか、とにかくしち面倒な本だ。
 
 表題に出ている通り、高校が舞台なのだがこれがまたぶっ飛んだ設定。
新規で出てきた団体や組織も多くて、そいで今後はこのノリでやる気か?と作者を疑いたくなる。
三冊目にもなるとかどうかは知らないが、主人公がよく喋ること喋ること。
根暗なキャラ設定がどんどん破綻していっている気がしないでも無い。
つうか、こういう内容ってさ、角川スニーカーとか富士見文庫ちゃうか?
メフィストからこっち行くかぁ?
という具合な内容なんだわ、まったくもってさ。
いや、別に悪いという意味あいでは無くて、一作目から三作目への移行っぷりを見ると、そのうち・・・と思うのだ。
まぁ、テキストの分量としてもこれまでの半分程度で、内容は更に軽さを増して、明日はどっちだ?だな。
次の作品で、また平均値に持ち直すのであれば、買い続けるかも知れない。
でも、次が同じもしくは更に軽くなってく様であれば、文庫落ちまで待つリスト入りかな。
 
 多少、連載用の主人公の謎をあかしつつも、更に設定だの伏線だのを追加していってるのだが、ちょっとやりすぎ。
全部があかされる頃には、少なくとも一人の読者が離れているかもね。
後書きにも多少は内容について作者が言及しているが、少なくとも読者としての俺は望んではいない。
 
要は(こういう適当な一般化が嫌いな御仁もいるだろうが)俺の感覚だとツマラナイのだ。

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Oct.9,2002 (Wed)

こっこ・コッコ・国庫

 帰り道、十字路を曲がってちょっとすると後ろから赤い回転灯がやってきた。
ああ、なんか違反車でも追っかけてるのかね、と脇に寄せて先に行かせる。

  • ・・・・・あれ、何で停まるんだ?
  • ・・・・・・・・・・降りてくるぜ、おい。
  • ・・・・・・・・・・・・・・つうか、俺かよ(-_-;)

「赤の点滅信号、一時停止違反です」

あ〜お切符、青切符です。

 違反状況を一通り確認させられて、青切符の簡易調書をとられる。
まぁ、確かに停まらなかったよ、状況的に停まる流れじゃ無かったし。

 減点2,反則金\7,000ですわ

 疲れてんだよ、早く帰って寝たいんだよ、いいからとっとと帰せ。
と言いたいのは山々なのだが、最近の信用を落としている警察らしく口調だけは丁寧なので、それに合わせる。
一通りアレが終わると、解放された。

「お手数かけましたね!(-_-;)チッ」

取りあえず聞こえるように舌打ちして、一旦車に乗り込む。

まだパトカーは動かない。

煙草を取って、車から出てくる。
後に、前にある自販機でコーラを買い、ついでに煙草を出して一服開始。

まだパトカーは動かない。

そう、この手の活動中のパトカーってヤツは検挙者が立ち去るまで動かないのが常だ。
警官3名は既に乗り込んでいるが、私が動かない為に現場を離れない。
ふか〜く紫煙を吸い込みながら、まったりとしてやる。

まだパトカーは動かない。

煙草をふかしながら、夜空を見上げたりする。

まだパトカーは動かない。

とうとう一本吸いきった。
いっそじれて出てくるまで時間を潰してやろうかと考えたが、自分が家に帰りたい事を思い出した。

まだパトカーは動かない。

のそのそと準備をして、エンジンをかける。
直ぐには出ずに、オーディオなんかを弄ってみる。

まだパトカーは動かない。

さて、と思いながらようやく車を発進させる。

それを見届けて、ようやくパトカーは去った。

 10日以内に国庫に反則金を納めないといけないのは癪だ。
さて問題です、嫌がらせは成功したのか?


Oct.13,2002 (Sun)

巷説百物語

『巷説百物語』
著者:京極夏彦
出版:角川書店
 
 今更かも知れないが、多少京極夏彦を身の回りに普及させる意図。
そういう訳で、書評フォーマットで新たに乗っけます。
 まずは、オビの口上から、
 
 現世と幽世の端境に、
 弔い鈴が鳴り渡る−−。
 江戸の薄暮に蠢く、
 妖怪遣い・又市一味ここに登場!
 
 う〜む、まるで時代劇のオープニングだね。
というかまんまその辺りを狙っている。
この作品世界は、WOWWOWで『怪』というTVシリーズとしても放送された。
ポイントとしては、小説とは別に『怪』の為に京極夏彦が書き下ろしている点かな。
 
 おっと、巷説〜の方だったっけ。
基本的には裏家業な又市一味が繰り広げる、(多分)勧善懲悪な物語だ。
 この又市一味とは、
 
 ・小股潜りの又市
 ・事触れの治平
 ・山猫廻しのおぎん
 
 の3人を中心として、個々の仕掛け毎に更に助っ人や関係者が現れる。
そして作品世界の主人公、山岡百介が又市一味と接点をもつ表の住人として物語が進む。
 
 内容に関して言えば、妖怪見立ての『必殺』に近い。
『必殺』とは、「必殺仕掛け人」や「必殺仕置き人」、「助け人走る」とかの『必殺』シリーズだ。
『必殺』的要素が多いのだが、本質は百物語にある。
百物語とは、江戸期に流行った町人の娯楽のひとつだ。
自分や知人といった人間が遭遇した怪異等を語り、そのたびに蝋燭の火を消してゆく。
丁度百本目の蝋燭を消すと、その場で怪異や妖怪を呼ぶといわれていた。
そうならない為には、99本で止めなければならないとか、憑物落としを同席させとくだのが必要。
また怪異・忌憚を集めたものを、通称百物語と称した・・・というもの。
 
 「これじゃわからん」な説明だが、まぁ読め。
最近はハードカバーじゃ無くて、新書版が出てるから多少は安くなっている。
とにかく読め。
 
御行奉為

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続 巷説百物語

『続 巷説百物語』
著者:京極夏彦
出版:角川書店
 
 巷説百物語の続編である。
まずはオビの口上から、
 
 道を通せば角が立つ。
 倫を外せば深みにはまる。
 そっと通るは裏の径。
 所詮浮き世は夢幻と、見切る憂き世の狂言芝居。
 身過ぎ世過ぎで片付けましょう。
 妖怪遣い、闇の渡世人、又市一味再登場。
 
 −−−かぁ!いいねぇ!
たまらないね、この時代劇な口上は。
つうかさぁ、最近のミステリ物とかSFとかを読み始める前って、
俺って椎名誠の奇妙な文章と、時代モノと、その他雑多な本ばっかり読んでたからなぁ。
まぁ、時代モノと言っても、池波とか藤沢とか司馬とか隆とかだけどさ。
時代モノって言うくらいなんで、江戸ばっか。
歴史小説はさほどでもない。
剣豪ものってのが必然的に多くなるんだけど、立派なのは好みじゃない。
個人的には、藤沢の「用心棒日月抄」が貧乏くさくていいね。
 
 で、続巷説なんだが、一度嵌ると・・・
という具合で、巷説百物語が楽しめた人間ならば、間違いなく面白く読める。
 
 前作からは多少時間が経った設定となっている。
今回は完全な短編ではなく、短編が微妙にリンクしつつ物語が進み、全体を構成している。
この辺りの構成力つうのは、『塗仏の宴』にて実証済みで、京極の才能の一片であろう。
つうか「俺にゃ無理だ」な感慨を抱かせる(←溜息つく程やってねーだろ貴様は)。
この作品では、又市と百介の決定的な別れを書いているが、この先は『後 巷説百物語』を待たねばなるまい。
 
御行奉為

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Oct.14,2002 (Mon)

京極夏彦『怪』DVD-BOX

京極夏彦『怪』DVD-BOX
 
 え〜巷説百物語の世界を映像化した作品『怪』のDVD-BOXです。
放映された4作品&メイキングを収めたボーナスディスクの計5枚セット。
 
 ・七人みさき(しちにんみさき)
 ・隠神だぬき(いぬがみだぬき)
 ・赤面えびす(あかづらえびす)
 ・福神ながし(ふくじんながし)
 
 この4作品だが、WOWWOWでの放映以外に劇場公開もされている。
シネスコサイズに近かった様な気がするが、ビスタサイズかもしれない。
 ついでに言うと、妙なゲストがチラチラと出てくる事がある。
まぁ、京極夏彦自身は扮装らしい扮装はしてないので、直ぐにわかる。
後は、宿の鮫吉親分・みゆき亭お初・村山石燕・匣の中身、等まぁ色々と出ては来る。
ここに上げた名前だけでわかる人も居るだろうが、まぁ、実際に見てくれ。
 
 京極夏彦本人ネタとか出てくるんですけどね。
「赤面えびす」では山岡百介が版元に持ち込んだ戯作のタイトルが「姑獲鳥ナ夏」という分厚い作品で、
版元には「今時オバケじゃねぇ・・・難しい漢字がいっぱい、それにこの厚さじゃぁ枕になるのがいいとこだよ」と言われる。
よくわかってるじゃないか京極夏彦よ(笑)
つうか「福神ながし」に至っては、武蔵晴明社の中禅寺州済という、憑物落しの拝屋まで出る始末。
 
 まぁ、京極ファン向けのオマケはこのさいどうでもよい。
 
 今時のドラマで、特殊効果が必要なタイプの作品だが、CGは使っていない。
「ワンシーンに5千万を投入するならば、エキストラを千人単位で集めた方がイイ」というタイプの、全く持って常識的な監督だからだ。
CGとは、ゴマカシが必要な場合と、全く無いモノを撮りたいとき以外は使うべきじゃない。
特に、慣れない人間(監督)が使った所で、それほど効果的であろうか?
日本はまだまだこの点の層が薄い。
アニメーションみたいに、1から10まで画面を構築し尽すならばともかくね。
 
 さて、時代劇として『怪』は、中々良い出来だと思う。
お約束的というか、時代劇的ツボも抑えてあるし、やっぱり見せ方がかっこいい。
よく思うのだが、よくある連続テレビドラマって映像が面白くないんだよな。
アクションひとつを取っても、かっこ良さが無い。
 
 酷い例えかも知れないが、ジョン・ウーが好きなヤツってのは、
2丁拳銃で、しかも横打ちで、装弾数無視して弾丸がやたら飛交って、
ハイライトでは時間軸が奇天烈に歪んで、意味も無くハトが飛べばオッケー、
 という事もある。
 別にジョン・ウーを好きなヤツを小バカにしようという意図ではなく、
視聴者の多くは、必殺パターンを求めている所があるという点だ。
これは決して、ワンパターン化するという事ではない。
物語それぞれにあわせて、かっこいいシーンを演出するって事が重要。
クライマックスになったら、特定の音楽流して「見て下さい」と言っているのでは無い。
「一番力入れてんだから、見やがれコノヤロウ」という強さが欲しいのだ。
 
 まぁ、ええわ、とにかく見ろ!
 
御行奉為


Oct.15,2002 (Tue)

PowerPC_G5

 あそうそう、G5ってマジでPower4ベースで出るのね。
Appleも採用するという情報が飛び交ってるみたいだし。

 がんばれIBM!

 がんばれApple!

 あ、Motorolaは邪魔せんといてな。

覘き小平次

『覘き小平次』
著者:京極夏彦
 
 どちらかってぇと「嗤う伊右衛門」のグループに入れる作品だろう。
まぁ、読んだまんまと言えばそうなのだが、今回御行の又市は出て来ない。
事触れの治平が出て絡んで来るだけ。
 
 物語の構成としては、「塗仏の宴」や「続 巷説百物語」的だが、短編の集合とは見難い。
しかし、この微妙なリンクの加減がよろしい。
 
 四谷怪談と違って、出典が有名ではない為、どう料理した云々は私にはわからない。
しかし、表紙の開きに使われた北斎の図版くらいは知っているが、アレって役者書いたものだったのね。
多少興味は出たのだが、原典はまず買えない読めない。
この手の訳本というか、現代書籍としての出版物も安くはあるまい。
う〜む。

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陰陽師〜鳳凰ノ巻〜

『陰陽師』〜鳳凰ノ巻〜
著者:夢枕獏
 
 安部晴明を題材にした小説のスタンダードである、夢枕獏の『陰陽師』である。
因みに、私は文庫落ちしないと買わないので、とりあえず出たので買った訳だ。
 
 なんつうかなぁ、読んでる人なら分かるだろうが、
 
 「ゆこう」
 「ゆこう」
 そういうことになった。
 
 が実は結構好きだ。
全体的に、かなりあっさりした文章だが、描写が足りないとかそういう事は無い。
作家としての技術というものだろうが「神々の山嶺」はもうちょっと濃かった気がする。
まぁ、ジャンルというか内容的には「神々の山嶺」の方が、私好みではある。
読んだ事が無い人は、読んでおくように。
 
 あれ、陰陽師の書評だったハズだが・・・。
 
 後さ、みんな思ってる事だと思うけど、稲垣五郎に晴明役やらせたのはNHKの失敗だろう。
雰囲気云々よりも、なんか説明口調で台詞言われてもなんだかなぁ。

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Oct.16,2002 (Wed)

ノーベル平和賞

 ノーベル賞ってのは、ノーベル賞委員会が決めるもので、普遍的な客観等は望まれるべくも無く、
何らかの意思が介在するのは避けられない。
もっとも人間である以上、当然と言えば当然なのだがね。
文学賞とか平和賞とかは、特に「?」な事が多いが、今回は特にその色が強い。

 本年度のノーベル平和賞に、元米国大統領であるジミー・カーターに決定したそうだ。
あの、カーターだよ?ただ、在任中云々ではなく、退任後の扮装調停に関わる活動を認められたという事だ。
元米国大統領として、北朝鮮だのキューバだのに実際行って交渉を行ったわけだしね。
世界中が考えている通り、イラクとの戦争一直線な米国に対するノーベル委員会の牽制である。
はてさて、都合の良い人ジミー・カーターは今後どうなるのだろうねぇ。
米国的独善の最右翼、レーガンの前の大統領という認識程度しか私にはない。
ここへ来て政治的玩具として、方々引っ張り廻される事になるんだろうなぁ。

 で、ノーベル委員会の思惑というか、この露骨な米国批判は米国世論にはどう影響を与えるのだろうか?
「自国の元大統領がノーベル平和賞を受賞した♪これはめでたい!」で、終わる訳が無いんだけど。
カーターの受賞を賞賛する=現政権に対する批判、という短絡な図式となったら面白いだろうなぁ。
で、カーターのニュースを受けて、それを賞賛するかの様なキャンペーンを張った会社がある。

Apple,Inc. のThink different.キャンペーンだ。

 ポスターイメージは、日曜大工的仕事を行う元米国大統領の姿。
なんだかなぁ的な、ベッタベタなイメージ戦略だが、逆に言えば米国市民が望む元大統領像なのだろう。

 ただひとつ言える事は、カーターと言えども元米国大統領だ。
この感覚は、わかるよね?


Oct.17,2002 (Thu)

 ようやく『川の深さは』を手に入れたので、一連の作品の書評と行こうか。
(前回間違えて書き終わって無いまま、スクリプトにかけてしまいました)

川の深さは

『川の深さは』
著者:福井晴敏
 
 第43回江戸川乱歩賞への出品作である。
以前書いた通り、福井晴敏はこの作品で乱歩賞を受賞できなかった。
が、選考委員会にて話題になったという事実が話題になった。
つまりは、相応の実力があった訳だ、最終選考に残るのだから。
 
 まぁ、そんな事はどうでもいい(身も蓋も無いが)。
 
 作者が警備員をやりながら小説書いてたせいか、警備員の日常が事細かに書いてある。
なるほど・・・作家目指すにゃ丁度良い職場だった訳だ。
 
 作品世界としては、サリン事件当時の日本。
今読み返すと、当時のオウムの馬鹿さ加減ってのが伝わって来る。
勝者または強者の倒錯的心理のひとつとして、敵に過度の能力を求めるというものがある。
「俺たちが戦って勝った相手は立派でなければならない」という心理だ。
分からないでも無い、命をかけて戦い、互いに傷つき、そして得た勝利。
その勝利の相手が、実は「馬鹿(程度が低い)」だったなんて認めたく無いものだ。
終戦当時、ある帝国軍士官が米国兵士官に言われたセリフが記録で残っている。
「我々はスレイブと戦ったんじゃ無い、サムライと戦ったんだ!そうだろう?」
前線にて終戦を迎え、その場で降伏した帝国軍士官が下出に出た為らしい。
この意味はどうとらえるべきか?
「誇りを持て!」という事か?
いやいや、自分が信じた戦いの理由を崩しかねない言動は、敗者と言えど許せん!という感覚だと思った。
要は、自己満足の為の発言だ。
同じ事がサリン事件の時もあった。
俺には、あんな連中の杜撰なテロが成功する様な日本の危機管理能力の無さを受け入れ難かったのだ。
だから当時は、「黒幕がいる」「麻原如きが作り出した半端な組織に大規模テロなんて出来る訳がない」と信じたかった。
実際にはできてしまう。
非常に危うい世界に生きている事を理解せねばならなかった。
 
 読まない人はホンと読まないジャンルなのだが、良い内容だったと思うよ。

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Twelve Y.O

『Twelve Y.O』
著者:福井晴敏
 
 第44回江戸川乱歩賞の受賞作。
本作のタイトルは、作中登場人物が使っているコードネームである。
その由来は作中で明らかにされるのだが、あまり気持ちの良いものではない。
まぁ、由来に関わる人物への個人的偏見のなせるわざというものか。
 
 またしても主役はおっさん。
これは福井晴敏の趣味なのか、主義なのかはわからない。
必ず、現場の叩き上げなおっさんが主役である。
今回のおっさんのテーマは、地連の哀愁。
分かるなぁ・・・という感覚を呼び起こすというかなんというか。
 経験から書くと、まず自分から自衛隊の地方連絡所に連絡をするやつは滅多に居ない。
いや、職安とかと比べたら段違いだが、それでも少ないのは確かだ。
ありとあらゆるツテやエンを辿り、勧誘をするのだ。
これは一部の警察も同じではあるけれどね。
で、たまーに興味本位で連絡をしてくるヤツなんかはカモ同然。
勧誘の言葉だけ聞くと、とても軍隊とは思えない。
「入隊教育終われば楽」だとか「恩給がつく」だとか。
訓練,規律,法的な面の話は一切出ない。
常套っちゃ常套手段だな。
 
 しかし、何故そんな私が現在SEなんかやってるかというと。
幹部候補生試験に落ちたからだ。いやぁ、ある面での趣味を満足させる良い機会だったのだがねぇ。
 
まぁ、それなりに楽しめたけど、なんか他の作品と被るんだよなぁ。
世は並べてバリエーションルートとも言うがね。

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亡国のイージス

『亡国のイージス』
著者:福井晴敏
 
 えっと、これもなんか賞を取っていたらしい。
けど、書いてる今思い出さないから興味があれば自分で調べてくれ。
 
 エージェント単位の陰謀劇を書いて来た福井晴敏が、満を持してクーデターもの!
いやぁ、実際はテロリズムなのだが、自国の軍隊&自称「決起」なのでクーデター、と。
FCS3の開発やってた護衛艦「あすか」には、以前書いた通り横須賀で見学してきた。
現在の「あすか」は、フェースドアレイレーダは外見上載っていたが、VLSは取っ払った後の様だった。
試験艦という立場ではあるが、有事の際には簡易改修のうえ戦列に参加する。
 
 いや、「あすか」の話じゃ無いな。
この作品中に描かれている、ミサイル防衛構想は非常に現実的である。
だが、その現実的云々は、有効であるという点においてであり、実現し易いという意味ではない。
つうか、護衛艦総針鼠化計画と言ってもいいこのプラン。
純粋国防族には魅力的だろうねぇ。
まぁ、そのためのFCS3なのだが、もっと射程の長いミサイル装備せなあかんて。
 
 それでも話がズレるな。
連続して紹介している3冊の中で、最もボリュームがある。
これだけ濃ゆく書けるじゃん、という証明の作品となったかな。
力入れて薦める訳じゃないけど、面白かったよ。

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Oct.21,2002 (Mon)

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